当社が2019年より実施しているベトナムでの活動が、「アジア健康構想(AHWIN)」の取り組み事業として掲載されました。
アジア健康構想・アフリカ健康構想
【活動内容】
「高齢者・障害者向けいす式階段昇降機・段差解消機事業の案件化調査」
アジア健康構想(AHWIN:Asia Health and Wellbeing initiative)とは、日本政府が健康長寿社会の実現に向け、医療分野の研究開発や新産業創出等に関する施策を総合的かつ計画的に推進する活動です。
アジア地域では高齢化が急速に進んでおり、社会制度・産業が対応していない状況になりつつあります。アジア地域への地域包括ケアシステムの構築や日本の民間事業者等の進出促進等の相互互恵的なアプローチによる取り組みを進め、健康長寿社会を実現し、持続可能な経済成長が可能なアジアを創ることを目指しています。
当社は、2019年よりベトナム社会における住居や生活環境のバリアフリー化に向けて、中小企業・SDGsビジネス支援事業「高齢者・障害者向けいす式階段昇降機・段差解消機事業の案件化調査」(2019年6月~2020年10月)を、国際協力機構(JICA)の支援の下、実施してきました。
ベトナムでは過去の戦争や国境地域での紛争の影響により、障がい者人口が約620万人と多く、また2017年に高齢者人口比率7%と高齢化社会に突入しました。2004年に国家高齢化委員会を設置し、2015年2月には国連障がい者権利条約(CRPD)に調印しています。現在に至るまで数々の施策が実施されてきました。
当社はそのようなベトナム社会において案件化調査を実施した結果、公共施設や公共空間でのアクセシビリティが未だ十分に確保されていない状況を確認しました。市役所・病院等の公共施設や就学・就業施設等を利用する方々より、「階段」や「段差」といった物理的なハードルを克服できる「バリアフリー化」が必要であると意見を頂きました。
案件化調査では、ベトナム社会のバリアフリー化に向けて福祉機器「いす式階段昇降機」および「段差解消機」を公共施設に設置するデモンストレーション活動を実施しました。
屋内・屋外の階段に設置し、いす型の座面に搭乗した高齢者や障がい者が階段を昇り降りするのを補助する福祉機器です。
階段は曲がりのない直線型のもの、U字やL字に曲がった曲線型のもの双方に取付けて使用できます。階段昇降機はホームエレベーターのように下階と上階を縦につなぐ大規模な工事を行わずに済むので、比較的安価に既存の住居へ取付けられます。
案件化調査では、ハノイ市にあるリハビリ整形病院に設置し、高齢者や患者の方に利用いただきました。
住宅の玄関口や店舗の入り口のように、段差がある空間に設置し、車いすに搭乗したまま段差を垂直方向に移動して乗り越える補助を行う福祉機器です。
バリアフリー化を行う手段としてスロープの利用が検討できますが、スロープを設置するには段差の約12倍の距離が求められる為、空間の余裕が必要となります。既存の施設や建物が密集する環境ではスロープを設置する余裕が無く、段差解消機が利用されます。
案件化調査ではハノイ駅のホームに設置し、駅を利用する障がい者や利用客の方に利用いただきました。
ベトナム社会において障がい者や高齢者が取り残されることなく、持続可能な社会を実現するには、階段昇降機や段差解消機のような福祉機器を公共施設・公共空間を始め、生活空間へ設置・普及することによる、生活の質(QOL)向上や、就学・就業に向けたアクセシビリティの改善が求められます。
当社は案件化調査において、生活環境の改善に関わる福祉機器を円滑に導入し、かつ安全に設置できるように、建築関連法制度について整理し、ベトナム政府機関へ政策提言を行いました。
今後もベトナムの労働・傷病兵・社会福祉省(MOLISA)、建設省、自治体、住宅開発事業者等と連携し、障がい者や高齢者が活動する公共施設、個人住宅を含む生活空間へ「いす式階段昇降機」および「段差解消機」の設置・普及することを通じて、移動等の円純化を推進していきます。